2011年8月17日水曜日

底抜けに明るい人達に出迎えられた街、Beograd(1) (8/14 - 8/15)

バルカン半島北上ルートでソフィアの次に来る大きい都市はセルビアの首都、ベオグラードだ。

ベオグラードは今回の旅行ルートの中で知人がいる数少ない街のうちの1つだ。しかし知人、と言っても
実はかなり間接的な繋がりで、アブダビで1日だけ会ったセルビア人夫婦の奥さん側の家族と友人(笑)

アブダビでの夕食中の会話で僕がベオグラードに寄ることを口にしたところ、「セルビアに日本人が来ること
なんて毎日ある出来事じゃないわ。全てセットアップしてあげるから任せて!」という心強いお言葉を
もらった。それから数日後、なんとベオグラード滞在中の僕のスケジュールを時間刻みで書き入れた
チャートと、家族の写真(解説付き)が送られてきたのだ。そのスケジュールによると、駅に迎えに
来てくれるのは双子の姉と義理の兄、翌日市内の観光に連れていってくれるのは大学時代の友人とその友人の
友人の妹(大学時代日本語専攻)、そしてベオグラードのナイトライフ体験ツアー(飲み)に連れていって
くれるのは元同僚夫妻。更に滞在中はご両親宅に好きなだけ泊まっていってくれ、とのことだった。

セットアップ、というのは誰か紹介してくれる程度だと思っていた僕はこれを見たとき驚愕した。
確かにこのセルビア人(Ana)は僕の知人の会社の同僚で親友なので、「親友の親友の為なら」という
親切心がかなりあるが、それを差し引いても驚くばかりのホスピタリティ精神だ。


そんな訳で、ベオグラード行きは特に楽しみにしていた。それじゃなくてもセルビアと言えば
テニス好きの人にとっては気になる国だ。現在男子ツアーナンバー1のノヴァク・ジョコビッチを筆頭に
ティプサレビッチ、女子はイヴァノビッチとヤンコビッチと、人口700万人しかいない小国から
トップレベルの選手を驚異的な確率で輩出している。また、日本人にとってはピクシーことストイコビッチの
出身国としても知られている。
ヨーグルトとバラくらいしか知らなかったブルガリアに比べれば元から興味があった。



ソフィアからベオグラードに行く電車はお昼の12時25分発だった。ベオグラード着は19:19の「予定」。

前席予約制なので、指定席券を買って電車に乗り込み、自分が乗るはずのコンパートメントに
入ると、自分の二倍くらいの幅はあろうかというブルガリア人のおばさんが4人くらい、6人部屋に
ドンと居座ってこちらを睨んできた。ブルガリア語でひとしきり何か言った後、「あっちへ行け」という
ような手の合図をされる。何故自分の席に間違えて座っている人達に怒られなきゃいけないのか
よく分からなかったが、こちらが強引に座ったところであの厳ついボディーと眼光に耐えられる自信は
全くなかったのであっさり諦めて隣の空いたコンパートメントに座る。と、しばらくすると全く同じ
境遇のデンマーク人2人とイギリス人カップルが僕の部屋に入ってきた。彼らも自分の席に座ろうとしたら
「何か良く分からないが怒ったブルガリア人のおばさんに追い出され」たそうだ。その時点で意気投合
した僕等は、その後の長い列車の旅が短く感じるほどよく喋り、仲良くなった。みんな久しぶりに
英語話者に会ったようで、言葉が通じないフラストレーションをその場で解消しているようだった。
かく言う僕も、イスタンブールでもソフィアでも、まともな英語を喋る人にはほとんど会っていなかった。
特にブルガリアは文字からしてキリル文字(ロシアと一緒)なので何も読めないし、お店の人も大抵
片言喋れれば良い方、という程度だった。しかしさすがにどこもホテルは唯一英語がちゃんと通じた。

お互いの国の医療制度、徴兵制、移民問題、政治などについて延々と語り、これまで訪れた国や街、
そしてこれから行く国や街について情報交換もした。さながら「先進国部屋」という感じになって
しまっていたが、その間周りの部屋のブルガリア人達は通路でタバコを吸い、酒を飲み、通路にゴミを
捨て、大声で喋っていた。デンマーク人もイギリス人も「ブルガリアが何故EUに入っているのか不思議だ」
と言っていた。彼らの話を聞いていると、西欧と東欧にはやはり「壁」があると感じた。


ベオグラードにはこちらの予測通り予定時刻の3時間遅れで到着した。
特に故障やトラブルがあったわけではない。何故か30分おきくらいに何も無い林の中や原っぱのど真ん中で
20分くらい停止するので、それが積もりに積もり、3時間遅れたのだ。これが東欧では日常的なこと。
誰も何故意味不明な所で電車が止まるのか分からないし、誰も聞こうとしない。

19:19なんていう実現できるはずがない細かい到着時刻など設定せず、いっそのこと「20時くらい」とか
言ってくれた方がまだマシだ。この辺はアメリカの鉄道と共通するシステムのデタラメさを感じる。
要するに鉄道に限らずあまり力を入れていなくて誰にも期待されていないシステムというのは誰も
「本気」じゃないのでこうなるんだと思う。まあ僕は時間がタップリある旅行者だし、リスキーな乗り換え
計画も基本しないので、普段ならあまり気にとめない。しかしこの日ばかりは初めて会う
「知り合いの義理の兄」を3時間も待たせてしまっていることが気懸かりだった。
きっとセルビア人のことだからバルカンの時間感覚というのはよく分かっているだろう、と思っていたのだが。


ベオグラード駅に着いてホームを歩いていると2mはあるであろうヒョロッとした大男が僕の名前を
書いた紙切れを持って立っていた。彼こそが「知り合いの義理の兄」のMarkoだ。旅の友のデンマーク人と
イギリス人達に別れを告げ、満面の笑みで出迎えてくれた大男Markoの小さな車に乗り込み、町外れにある
Anaの両親の家に向かった。ベオグラード中心街から20分ほど走った小高い丘の上にある団地のような
ビルの二階にあるご両親の家に着いた頃には23時近くだった。Anaのお父さんのDjodje(ジョージ)は
土木エンジニア。とてもお喋りで、ガハハ!と大声で笑うとても楽しい人だった。お母さんのGordanaは
高校の数学教師で、もの静かだがとても優しい眼差しの方だった。そしてAnaの双子の姉(5分早く
生まれた、と威張っていた 笑)のIvaは陽気なAnaを更に3割増くらい明るくしたような人だった。
もうすぐ1歳になるIvaとMarkoの息子Filipは絵に描いたように可愛い赤ちゃんで、見ているだけで
こちらが笑顔になる。

全員が全員、まるで僕を昔から知っている友人のように歓迎してくれた。
旅のこと、日本のこと、などなど質問の嵐で、日本からの親善大使にでもなったような気分だった。
結局夜中の1時過ぎまで楽しく語り、Anaが昔使っていたという部屋でベッドに入った。

これから更にAnaの友人達にも会えると思うと楽しみでならなかった。


IvaとFilip。親子でお揃いのサングラスが可愛すぎる!



MarkoとFilip


2 件のコメント:

  1. 出会いは旅の醍醐味って言いますけど、
    そこまで旅先で面白い出会いをするのは
    初めて聞きました(笑)

    色々な場所に行って、色々な風景を見て、
    色々な人たちに出会う旅行記を楽しみに
    読んでます。

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  2. 初コメントありがとう。
    僕も今回の出会いは驚きました。まあ知り合い経由なので
    完全に偶然ではないけど、まさかこんなに親切にしてもらえる
    と思ってなかったので。同じように日本に来た人に「ここに
    来てよかった」と思わせるもてなしをしたいな、と思ったよ。

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